バンコクのクラフトビール事情 (5)

published on 2014-11-17

アジアのベストバー第1位に輝くMikkeller BANGKOK

Mikkeller BANGKOK

5回に渡ってお届けしてきましたバンコクのクラフトビール・バー・レポート、サイアム、シーロムからアソーク、トンローと来て、最後はエカマイにあるMikkeller BANGKOKです。
そう、ここはベルリン出張営業の様子をびあトモレポートでもお届けした、デンマークのファントム・ブリューワリー Mikkeller のバーなのです。

これまで紹介した他のところとは違って、Mikkeller BANGKOKは観光客が間違っても行くことのない地区にあり、駅からは遠くタクシーで行くしかなく、しかも、目的地はショッピングモールなどではなく、住宅街の入り組んだ路地の奥にあるという、紹介した中でいちばん不便な場所にあります。
とはいっても、少し不便なだけです。タクシーだって駅からなら150円ぐらいです。ビール好きならば、絶対に行ってみるだけの価値のあるバーなのです。


Mikkeller BANGKOK

Photo ©Mikkeller

我々が訪ねたのは閉店間際の23時半頃で、辺りはすでに真っ暗なため写真を撮ることができなかったのですが、閑静な住宅街の中に建つ、緑豊かな庭に囲まれた一軒家のバーで、店内のカウンターやハイテーブルのスツール席だけでなく、ライトアップされたテラスのテーブル席もおすすめです。

BREWの回で紹介したCNNによる「ビール通が選ぶ、アジアのベストバー10選」で、なんとこのMikkeller BANGKOKは堂々たる1位に輝いています。
もちろん、Mikkellerのドラフトをはじめとして、他では飲むことのできない数々のビールがあるというのが大きな理由なのでしょうが、抜群のアンビアンスも寄与していることは間違いありません。
画像はMikkeller提供のものですが、なんともすてきな雰囲気だということがお分かりいただけると思います。


Mikkeller BANGKOK

さて、肝心のビールですが、タップがずらりと壮観の30も並んでおり、恐らくはバンコクで最多のタップ数でしょう。
そして、その半数ほどがMikkellerに当てられているというのですから、なにを飲めばいいのか迷ってしまいます。そんなときは店員さんにアドバイスしてもらうのがいちばん、私も色々と聞いて、MikkellerのGreen Gold IPAをいただきました。

すこし変わったところでは、タップの1番から3番はSukhunvit Pilsner, Sukhunvit Brown, Sukhunvit Witに割り当てられています。Sukhunvitというのは、そうスクンビット通りのことですから、これはMikkeller BANGKOKオリジナルのビールなのです。

もちろん、30種類のドラフトの他にもたくさんの瓶ビールも置いてあって、これまたMikkellerのものを中心に迷うほどあります。


Mikkeller BANGKOK

店内は1階だけでテーブルとカウンター合わせて40席程度ゆったりと配置されており、それに加えて、テラス席と2階もあります。

装飾はオフホワイトを基調にして、庭に面した大きな窓の枠などのところどころにターコイズの差し色のポップ感と、ナチュラルウッドのテーブル・チェアというポストモダンともいえる組み合わせに、何ヶ所かの壁面に描かれたMikkellerの不思議なイラスト。

派手ではないものの、静かに落ち着いたというよりは、どこか華やいだ感じのあるインテリアでした。


Mikkeller BANGKOK

テーブルには一つ一つ、ボトルの一輪挿しとキャンドルの灯り、店内全体を一様に明るくするのではなく、かと言って、バーにありがちな薄暗さと雰囲気の良さを混同しているわけでもなく、各所に配置されたスポットライト。店内をぐるりと見回せば、すべてが絵になっており、グラスをテーブルに置いて適当にカメラを向けるだけでそこそこ様になります。

このような雰囲気のなかでMikkellerのドラフトが飲めるとしたら、それはやはり、アジアのベストバーNo.1に選ばれるのもむべなるかなといったところです。

デンマークの他には、ストックホルムとサンフランシスコ、そして、ここバンコクにしかないMikkeller Bar、びあトモとしても本当に一推しのスポットなのですが、場所がとにかく分かりづらいので、少し詳しく説明しておきます。


Mikkeller BANGKOK

BTSのエカマイ駅を降りて、トンロー駅側の1番出口からスクンビット通りに出ます。階段を降りるとすぐその先に大きな通りが右手に延びていて、それがソイ63、別名ソイ・エカマイです。
歩いて行く場合は(約1.5kmと距離はけっこうあります)、そのまま右折して北上すればいいのですが、タクシーに乗る場合は信号を渡って反対側に入ってから乗ってください。途中にBig C Supermarketなどを右手に見つつ、およそ1kmほど進むと、同じく右手にHealth Land Ekamaiという建物が大きめの庭の奥に見えます。その角を入るとエカマイ・ソイ10になります。
ちなみに、このHealth Landというのはバンコク市内に何軒かあるタイ・マッサージとエステのお店で、バンコクとしては安くありませんが、それでも極めてリーブナルブルな値段で、きれいな店内で施術を受けられます。歩いてきた人は、マッサージですっきりしてからMikkeller BANGKOKを目指すとよいかもしれません。

さて、ソイ10に右折すると、ここから住宅街に入ります。ソイ10を250mほど進み、なにやら高級感あふれるマンションを通り過ぎると、右手にYak 2(Yaek 2とも書く)という路地が出てくるので、そこを右折、すぐにT字路に突き当たって左折、そのまま真っ直ぐ、すぐに右手に現れる路地は無視して直進すると、同じく右手でMikkellerのイラストが出迎えてくれることでしょう。目的地Mikkeller BANGKOKです。
我々の乗ったタクシーはこのYak 2の中で全ての路地にトライしてしまい、暗闇の中を行ったり来たりを繰り返しました。

実は、帰りがもう少し大変です。というのは、Yak 2は言わずもがな、エカマイ・ソイ10も交通量の割にはタクシーが来ないので、夜遅い時間にとぼとぼとソイ・エカマイまで歩いて戻らないといけません。比較的治安もよい高級住宅街ではありますが、深夜に一人で暗い夜道をというのは推奨できないので、早めの時間に行くか、遅くなったらタクシーを呼んでもらうかしたほうがいいかもしれません。


バンコクに吹き荒れる(?)クラフトビールの熱い旋風はいかがだったでしょうか?
ここでは紹介しきれなかったクラフトビール・バーも他にたくさんあります。ほんの数年前まではバンコクでビールと言えば、本当にシンハー、チャン、レオといったナショナルブランドと、ハイネケンやアサヒなどのタイ国内でのライセンス生産によるものしかありませんでしたが、ここ数年で様変わりしました。
実際、Mikkeller BANGKOK, Craft, the Beer Bridgeはいずれも今年オープンしたばかり、HOBSでようやく数年というところ、バンコクのクラフトビールはまだその端緒についたばかりといえます。

50バーツ(約150円)も出せば、屋台やフードコートでなら十分に食事ができてしまうというバンコクの物価から見れば、ビールが1杯2〜300バーツというのは極めて贅沢品であり、どうしても客層が限られてしまうため、今のところ日本以上に裾野の広がりに欠けてしまう嫌いはありますが、それは上質なサービスをゆったりと受けることができるということでもあるのです。
ビールを愛してやまない方はバンコクに行かれることがあれば、このブームをさらに盛り上げるためにも、ぜひクラフトビール・バーを訪ねてみてください。

kiyora

author : kiyora
my favorite beer : Dead Pony Pale Ale