幻のびあトモ試飲会 #0

published on 2014-10-17

先日、インディア・ペール・エール縛りで開かれたびあトモ試飲会、その様子はびあトモレポート「第1回びあトモ試飲会 in 北千住」であなご君がお届けしましたが、実はこの試飲会がIPA限定になったのには、その伏線ともいえる幻のびあトモ試飲会ナンバー0の存在があります。
第1回のレポート公開を記念して(?)、こっそり、試飲会 #0の様子もお届けしてしまいます。

試飲会 #0が開催されたのは、第1回よりも二月ほど前の2014年8月12日、場所は新宿のRoad House Dining Beer Barさんの2階をお借りしてのことでした。


Stone Brewing Enjoy by 08.16.14 IPA

幻のIPA Stone BrewingのEnjoy by IPA

さて、この試飲会が「幻」である理由、それは試飲会を開いたのにレポート記事を書かないで、試飲会そのものがなかったことにしようと企んでいたから…、などではありません(事実、企んでましたけど)。
このときのメインとなるビールが、日本では入手不可能といわれていた幻のビール、Stone BrewingのEnjoy by IPAだったからなのです。
ダブルIPAに分類されるフレッシュさ命のビールです。

「幻のビール」だなんて大げさなと思われるかもしれませんが、なにしろ賞味期限がたったの35日しかなく、日本に運ぼうとすれば、当然のごとく、着いたころには期限切迫品!!
醸造所の公式ページにも「長持ちするようには醸造していない」と書かれているほど。
毎回毎回、賞味期限は伊達じゃないよとばかりに商品名に期限を冠してしまうという徹底ぶりで、日本初上陸となって我々が入手することができたのは Enjoy by 08.16.14。つまり、8月16日までに味わえよというビールだったのです。


今回、我々がEnjoy by IPAを買い求めたのは、いつもお世話になっている「びあマ」こと東京リカーランドさん。Enjoy by IPAを取り扱った数少ない(もしかしたら唯一の?)販売店です。
取材記事でもお伝えした通り、バックヤードまで冷蔵庫完備で、このデリケートなビールでも安心して買うことができます。

あまりの貴重さ故に、予約分だけで完売してしまい店頭には並ぶことがなかったEnjoy by IPA、やはり、幻の名にふさわしいビールです。
我々もすかさず受け付け開始の初日に予約。そして、入荷の連絡を受けたのが8月6日のこと。ほらね、賞味期限は残すところ10日のみ!!

これが個人で楽しむだけなら、入荷当日にもらい受けに行って、その日のうちに ENJOY!! なのですが、今回はびあトモ試飲会で飲もうということになっていたので、下手に自分の家に持って帰って管理状態が悪くなるよりはと、その開催日となる12日まで東京リカーランドさんに預かっていただきました(というか、勝手に引き取りに行かなかっただけです)。


Stone Brewing Enjoy by 08.16.14 IPA

やっと手元に届いたEnjoy by

試飲会当日、クーラーボックスに大きめの保冷剤を入れて、うやうやしくお迎え(!!)に行きました。
ついでに、試飲会で比較用にと他のIPAも用意します。試飲会 #0が、そして、ひいては第1回試飲会がIPA縛りとなったのは、そういう経緯からだったのです。
(さらに、ついでにあれやこれや買い求めたら、クーラーボックスがとんでもない重さになってました…)

さて、Enjoy by IPA、そのお味はというと、これがもう鮮烈の一言につきます。
グラスを近づけただけで漂ってくるフルーティーな香り、口にした瞬間に広がるホップのアロマ、そして、ダブルIPAならではの後を追いかけてくる強力な苦味とアルコール感。
しかも、ただ香るだけ、苦いだけというのではなく、その一つ一つがフレッシュなのです。極端に短く切られた賞味期限も、徹底した温度管理を要求する繊細さも、正にこの瞬間のためにあったのでしょう。

9.4%の高いアルコール度にIBUs 88という苦味を誇るこのEnjoy by IPA、アルコールにとても弱くてスイーツ大好きという、びあトモ1のお子ちゃま味覚の私なのですが、一挙にIPAに目覚めてしまいました。新しい世界が開けてしまいました(第1回試飲会のIPA縛りも、実は私の差し金だったりする)。

強烈な柑橘類の香りと苦味が襲ってくるこの感覚、例えるなら、新鮮なグレープフルーツの皮です。そう、実ではなく皮の方です。なぜなら、皮の方が苦味が強いから。
ただし、Enjoy byを味わうことのできなかった方、もう一度楽しみたい方、だからといって、グレープフルーツの皮を試しに食べてみるのは控えましょう。さすがに、皮にはえぐみもありますし、ポストハーベスト農薬の問題もありますし。
国産・無農薬・完熟・新鮮なグレープフルーツが手に入ったら、そのときは皮までどうぞ。あのEnjoy by IPAを飲んだときの感動がよみがえる…、かどうかは知りません。


Karl Straus Brewing Tower 10 IPA

Karl Strauss BrewingのTower 10 IPA

Enjoy by IPAと比較するために用意したのは、Karl Strauss BrewingのTower 10 IPAとASDA Mainbrace IPAです。

Karl Straussは今やウェストコートを代表するほどのブリューワリー。なんとディズニー・カリフォルニア・アドベンチャー・パークでもシエラ・ネバダなどと並んで提供されているほどなのです。
そこの看板ビールがこのTower 10 IPAですから、アメリカン・スタイルIPAの代表格といってもいいほどではないでしょうか。

Enjoy by IPAという強烈なのを飲んだ後なので、どうしてもそれとの比較として、フレッシュな香りと苦味をとことん追求しているわけではないという事実に気づかされるのですが、それでも十二分にフルーティー&ビター。ほのかな甘味も感じられました。
モルトの甘さがある分だけ、実はこちらのほうがIPAとして、よりスタンダードな味わいと言えるのかもしれません。


ASDA Mainbrace IPA

西友で購入のMainbrace IPA

かたや、イギリスのIPAであるMainbrace。
4.5%というIPAにしては低いアルコール度数に、まったりとしたコク。苦味はそこそこあるものの、これが同じIPA?と思ってしまうほど。
などと、ほんの数分前まではIPAなんぞ飲んだこともなかったのに、偉そうに語ってみましたが、それぐらい先ほどの2本とは大きくキャラクターの異なるビールです。

イギリスの酒税がアルコール度数に応じて変わるため(今でもそうなのかは知らん)、低アルコール度のIPAが作られるようになったという話を聞いたこともあります。
元来がIPAというのは海を越えてインドまで運ぶための長期保存を旨としたものであって、合目的的なホップの大量投入と結果としての苦味であったわけです。そして、赤道を越えてインドにたどり着いたころには当然フレッシュな香りなど残っていよう訳がないのです。
その意味では、こちらの方が定義としてのIPAに忠実であって、アメリカン・スタイルのIPAとは別物と考えた方がいいのでしょう。

ちなみに、このMainbrace IPAはスーパーマーケットASDAのプライベート・ブランドとして、イングランド最古の醸造所Shepherd Neameで造られており、ASDAと同じウォールマート系列ということで、西友でも販売されていました。


今回試飲したIPA + 2

今回の試飲会で飲んだIPAは以上の3種類、あまりにも3種3様で個性の違いすぎる比較であったため、善し悪しを抜きにした参加者の好みとしては大きく分かれ、Enjoy byで目覚めてしまった私のようなものもいれば、今流行のアメリカン・スタイルのIPAだと思って飲むと面食らうかもしれないが、とろりとコクのあるMainbraceがイングリッシュ・エールとして好きという参加者も。
いや、絶対にTower 10が王道だと思うのですが、いかがでしょうか?

「幻」のびあトモ試飲会 #0、3本のIPAの他にも、Mainbrace IPAと同じShepherd NeameのSpitfire、チェコはプラハのビールStaropramenと、合計5本のビールを用意し、試飲会とはしたたか酔いしれることなのだと悟った、そんな新宿の夏の夜のことでした。


kiyora

author : kiyora
my favorite beer : Dead Pony Pale Ale