ビールに合うベルギー料理

グルメの国 ベルギー

フリッツ(frites)を食べるベルギーのおトモだち

©Maison Antoine Place Jourdan-OPT-ThomasBlairon.be

日本では意外と知られていないのかもしれませんが、実はベルギーは世界に名だたるグルメ大国なのです。
基本はフランス料理に近いものが多いのですが、海の幸・山の幸に恵まれて、フランスよりも美味しいフランス料理と、ドイツよりも多彩なビールのあるベルギーこそが、ヨーロッパでもっともグルメな国なのだと言う人もいるほどです。
また、フランスではほとんど見かけることのない魚介類のメニューも多く、日本人の好みにもよりマッチしているのかもしれません。

とはいえ、ベルギー料理と聞いて、すぐにいくつものメニューを思いつく人も少ないのではないでしょうか。
あまり日本人にはなじみのないベルギー料理ですが、ビールに実によく合う料理がたくさんあるので、そんな中から、これぞベルギー料理という代表選手を紹介しましょう。
(レシピも随時公開してゆきますので御期待ください)

フリッツ(frites)

早い話がフライドポテト。なんだ、ポテトかなどと思うことなかれ。
実はベルギーこそがフライドポテト発祥の地なのです。ビールとの相性のよさは言わずもがな。

フリッツ(frites)

©OPT [Emmanuel Mathez]

日本よりもポテトが厚めで芋のホクホク感を楽しめるのがベルギー流。二度揚げするのが、外はカリカリ中はホクホクの秘訣とか。
これにマヨネーズをつけて食べるのが定番ですが、サムライソース(sause samouraï)をかけるのが昨今の流行だそうです。

サムライソースとは、マヨネーズにアリッサ(もしくは、ハリッサ)という唐辛子ペースト、油、レモン果汁、塩こしょうなどを合わせたピリ辛のソースです。日本でも輸入食材のお店でアリッサを入手できるので、試してみてはいかがでしょうか?
分量としては、マヨネーズとアリッサ3:1が標準的かと思いますが、けっこう刺激的な辛さなので、そこはお好みで。
ちなみに、「サムライソース」の名前の由来は、辛くて刺激的なソースがおなかを切り開かんばかりだからとか(腹切りのイメージですね)、最初にこの手のソースを売り出したメーカーの名前であるとか諸説あってはっきりとしません。中には、その名前から日本伝来のソースだろうと思っていた人もいるそうです。

ベルギーでは町の至る所にフリッツのスタンドが並んでいて、みんなお気に入りの1軒があったりします。また、各家庭にポテトのフライヤーがあると言われているぐらいで、老若男女問わず愛されている国民食。
ということは、大阪でいうタコ焼きみたいな存在?

ムール貝(cocotte de moules)

日本でいちばん有名なベルギー料理といえば、ムール貝を蒸したものでしょうか。
日本だと上品にもお皿にきれいに並べられてサーブされることが多いのですが、ベルギーでは小鍋(cocotte コケコッコちゃんではない)いっぱいに、いえ、溢れんばかりにこれでもかとムール貝が盛られて出てきます。

ムール貝(cocotte de moules)

©OPT [Eike Dubois]

一人前で4〜500gはあるのだとか。とはいえ、貝殻込みの重さですし、日本人も大好きな貝料理なので意外と食べてしまえます。
味付けも香草と白ワインのマリニエールを筆頭に、ビール煮、プロヴァンサル、クリームソースと多種多様。お店によっては季節限定の味付けもあったりして、ゆく度にどれにするか迷うほどです。
貝殻にへばりついた身は他の貝殻の端をナイフのように使って外すのが通です。

びあトモスタッフはパリに行くたびに、なぜか、サンジェルマン・デ・プレかモンパルナスのLéon de Bruxellesという有名なムール貝のお店に行きます。
ここはその名の通りブリュッセルのchez Léonが本店の、百年以上の歴史を誇るレストランで、今ではフランスに80近い支店があります。最近、ロンドンのケンブリッジ・サーカスにもオープンしたということなので、ブリュッセルだけでなく、パリやロンドンでも本場の味を楽しむことができます。

カルボナード・フラマンド(carbonnade flammande)

いわゆる牛肉のビール煮込みです。炒めたタマネギやバター、ブーケガルニなどとともにビールで煮込みます。
レシピ本などによるとブラウンビールを使うことが多いようですが、ベルギーではグーズビールを用いるのが本式です。そして、完成した料理の味の多くは選んだビール次第で決まります。

日本でも一時、すき焼きにビールを入れると牛肉が柔らかくなるともてはやされましたが、こちらはその本家。つまり、とろけるような柔らかさということです。
とあるフランス語の料理本に書いてあったのですが、この料理、一晩寝かせると一層おいしくなるそうです。なんかどこかで聞いたような話ですね。

ちなみに、牛肉のギネス煮というのもありますが、これは北海のとある島由来で日本に入ったもので、ベルギー料理ではありません。
また、ラパン・ア・ラ・グーズ(lapin à la gueze)という料理もあって、こちらはウサギのグーズビール煮です。

ワーテルゾーイ(waterzooi)

魚と野菜をクリームにハーブで煮て、仕上げにバターと卵黄を加えたゲントの名物料理です。

元来はゲント名産のカワメンタイという淡水魚を使った料理なのですが、今日ではカワメンタイの減少で、鶏を用いるのが一般的になっています。
ゲントはもちろんのこと、フランドルの多くのレストランでお店毎の特徴を持ったワーテルゾーイが出されており、シーフードを使った豪華版もあります。

材料的には日本のクリームシチューに近いものですが、それよりはずっとさらっとしたスープに近いもので、バゲットをその汁に浸して食べるのがベルギー流です。

ブレ・ア・ラ・リエジョワーズ (boulets à la liégeoise)

ブレ・ア・ラ・リエジョワーズ (boulets à la Liegeoise)

©OPT [G.P.Ciraolo]

ブレ(boulet)とは肉団子のことで、そのブレにラパンソースをかけたリエージュの郷土料理です。
付け合わせはもちろんフリッツです。というより、ベルギー料理には必ずといっていいほどフリッツがついてきます。

ラパンソースとはタマネギ・ビネガー・黒砂糖・セージに、フランドル特産シロ・ドゥ・リェージュ(sirop de liége、リンゴを煮詰めた濃褐色のドロリとしたシロップ)から作られた甘酸っぱいソースです。

フランス語がわかる方はラパンソース(sause lapin 直訳するとウサギソース)って何?と驚かれるかもしれませんが、これはリエージュの郷土文化の維持に貢献したラパンさんの名を冠しているそうで、決してウサギ入りのソースではありませんのでご安心を。

アスパラガス・ア・ラ・フラマンド(asperges à la flamande)

ベルギーの春を彩る素材がホワイトアスパラガス。

日本ではグリーンアスパラのシャキシャキ感を楽しむのが一般的で、ホワイトアスパラガスは缶詰ぐらいしか見かけないせいか、あまり美味しいものという印象がないかもしれません。
しかし、現地で食べるとその柔らかさは格別で、ドイツからベルギーにかけては春の風物詩ともいえるほどの定番料理です。
ゆで卵を砕いてパターやパセリを混ぜたソースがフラマンド風。このソース、ドイツではオランダ・ソースと言うそうです。

マルセル・プルーストの『失われたときを求めて』(A la recherche du temps perdu)で料理人のフランソワーズが取り憑かれたように出し続けたのも、きっとホワイトアスパラガスの方なのです。

>> ビールと文化の国ベルギー

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