アイアン・メイデン『パワースレイブ』(1984)
初期アイアン・メイデンの到達点
前作『頭脳改革』に続いて1984年にリリースされたアイアン・メイデン(Iron Maiden)の5作目、『パワースレイブ』(Powerslave)は80年代のアイアン・メイデンを代表する名盤で、全英チャートで2位を獲得、日本でも一部の熱狂的なファンだけではなく、普通のロック少年少女がHM/HRを聴くようになる端緒となった作品の1つです。
そんな時代もあったんですねえ(日本におけるHM/HRの売上のピークは96年か97年だったと思います)。
『頭脳改革』におけるストレートな力強さと演奏の安定感はそのままに、本作『パワースレイブ』ではうって変わって複雑な曲構成と大作傾向というアイアン・メイデンらしさが復活、今でもファンから高い評価を得ている傑作であり、特に日本での人気は高いものがあります。
とはいえ、セールス的に前作と比較してみると、全英チャートこそ3位から1つ上がったものの、最終的にプラチナディスクに輝いた『頭脳改革』に対して『パワースレイブ』はゴールド止まり、全米チャートでも14位から21位と後退しています(両作ともプラチナディスクを獲得)。
いまだに人気のある『パワースレイブ』と遜色ない売上げを記録しておきながら、やや忘れられ気味の『頭脳改革』、やはり、音楽の評価というのは売上げだけではないのだと実感させられます。
Powerslaveとホワイト・ナイル
タイトルトラックPowerslaveの邦題は「パワースレイヴ~死界の王、オシリスの謎~」で、狙いすぎのあげく外してしまうという、当時の洋楽ではよくあった(今でもか?)、今となっては少々恥ずかしいものです。
ミドルテンポのPowerslaveは古代エジプトをテーマにした楽曲で、どこかオリエンタルな響きのある重厚な楽曲となっています(アラビア音階を使っているわけではないと思います)。民衆がその前に跪き崇める権力者、つまりはファラオが命を司る神でもあるにもかかわらず、人間として死に行く運命からは逃れられないという内容の歌詞となっています。
人はなぜみな死ぬのかという究極の謎という意味では、オシリスの謎と言えなくもないのかもしれませんが。
それはさておき、アルバムワークにもこの古代エジプトのテーマが使われており、ピラミッドの入り口に置かれた巨大な王の像、その顔がエディになっています(どうでもいいけど、これってエディが葬られていませんか)。
『パワースレイブ』発表後のツアー、そのアルバムワークをそのまま再現したかのような大がかりなステージセットによるワールド・スレイブリー・ツアーは、1984年8月9日のワルシャワから翌85年7月5日のカリフォルニアのアーヴァインまで、約1年間で187回の公演というハードな日程でも話題になりましたが、ワルシャワ、ブダペスト、ベオグラードなど当時の東側で公演を行ったことと、30万人が集まったロック・イン・リオ(アイアン・メイデンは初日のみで、当日のヘッドアクトはクイーン)など、色々と話題の多いツアーでした。
このツアーの様子を収録したライブ・アルバムが『死霊復活』(原題Live after Death)というタイトルでリリースされていますので、そちらもぜひ聴いてみてください。
この曲に合わせるビールというと、古代エジプトで栽培されていたエンマー種の小麦を用いて作ったホワイト・ナイルでしょうか。これは京都大学と早稲田大学が共同開発し黄桜酒造が醸造しているものです。
古代エジプトのビールをできるだけ忠実に再現したものは現代人の口には合わなかったということで(はっきりとは書かれていませんが、きっと、まずかったのでしょう)、麦芽にホップという現代ビールの原料にエンマー小麦を足したもののようです。
author : kiyora
my favorite beer : Dead Pony Pale Ale