Deep Purple "LIVE AT LONG BEACH 1976"

Live at Long Beach 1976
[Original Recording Remastered, Import]

それほど蒸し暑くもなかった6月のとある夜。
新宿西口、小田急ハルク裏手にあるROAD HOUSE DINING BEER BARORVAL オルヴァルやらDuvel デュベルなどのベルギービールを楽しんでいると、店内のスピーカーからこのアルバムが流れてきた。

Amazonでの表記を拝借すれば、アルバム名はLive at Long Beach 1976 [Original Recording Remastered, Import]となる。もともとは海賊盤で出回り、過去に何度かCD化もされている音源だと記憶している。かかっていたのはリマスター盤ということで、大昔に聞いたモノよりも音のバランスはよくなっているようで、特にIan Paice イアン・ペイスのドラムの音が、活気あふれる店内で聞いていても実に心地よかった。

1976年の2月に、米国のロングビーチアリーナで行われたライブを収録したアルバムである。
海賊盤の時代からこのアルバムが有名なのは、この頃すでに偉大なギターヒーローの一人として世界中で絶大な人気を誇っていたRitchie Blackmore リッチー・ブラックモアの後任として加入したTommy Bolin トミー・ボーリンが、結構ちゃんと弾いているライブ盤として認識されているからだ。言い換えれば、このアルバムはDeep Purpleでちゃんと弾いているトミー・ボーリンを楽しめる唯一のライブ盤ということで有名なのだ。
ご存命なら今年の8月で63歳のトミー・ボーリンは、本当に残念ながら1976年12月4日に25歳の若さで他界している。このアルバムの収録日が1976年の2月となっているので、その10か月後には旅立ってしまったことになる。

トミー・ボーリンが在籍した第4期Deep Purpleとしては、1977年3月の時点で既にオフィシャルからLast Concert in Japanというライブ盤が発売されている。こちらのライブの1年前、1975年に武道館で収録されたものだが、このアルバムは逆にトミー・ボーリンが全然弾けてないということで有名である。この時期は悪質なヘロインの摂取により手と指が麻痺していたというのが定説となっていて、ガッカリする迷盤として認知されている。

This Time Around: Live in Tokyo

因みに、同音源をミックスし直し、収録曲も大幅に増やした完全盤とも言えるThis Time Around: Live in Tokyoを聞くと、すごくイイとは言えないが、言われているほどに酷くはないし、楽しめる処も結構ある。

さて、このアルバムLive at Long Beach 1976でトミー・ボーリンは、リッチー・ブラックモアとは曲の解釈からして違うのではと思うようなファンキーなカッティングやアドリブを随所に散りばめ、聴き尽したと思われるDeep Purpleの曲に新たな味わいを加え、聴いていくほどにそのプレイは魅力を増していく。そして、美味しいビールと素晴らしい音楽はカウンターの時間を止めてしまい、いつの間にかもう1パイント、ビールを注文してしまう。
このアルバムには、Deep Purpleではトミー・ボーリンよりはちょっとだけ先輩の二人、David Coverdale デイヴィッド・カヴァデール(現Whitesnake)Glenn Hughes グレン・ヒューズの思いっきりはじけている様子もしっかりと収録されている。今でも現役のお二人だが、このアルバムの中では若さに溢れるピッチピチな25歳のミュージシャンであり、溌剌過ぎて微笑えんでしまう処も、それも数か所に渡って存在する。

AKB風に言えばDeep Purple四期生のトミー・ボーリンは1951年8月、アメリカ合衆国アイオワ州生まれ。
そしてちょっと先輩の三期生であるデイヴィッド・カヴァデールとグレン・ヒューズも、それぞれ1951年9月、1951年8月の生まれとなっており、この三期生と四期生の3人は同年生まれの同い年となる。
かたや、一期生の皆様は、
1941年6月、Jon Lord ジョン・ロード
1945年4月、リッチー・ブラックモア
1948年6月、イアン・ペイス、
となっており、一番近いイアン・ペイスでも3歳、ジョン・ロードとは10歳も離れている。
因みに、二期生のIan Gillan イアン・ギランRoger Glover ロジャー・グローヴァーはリッチー・ブラックモアと同じ年生まれ。
そしてこの同い年のお三方(三期生、四期生)が加入する前、第二期のDeep Purpleにおいて、すでに誰もが知っているSmoke On The Waterはリリースされ、世界的に大ヒットしている。
なので、このアルバムで伸び伸び溌剌と、極端に言えばやりたい放題な感じのお三方は、大ヒット曲を持ち、世界的に名を知られているビッグバンドに、その成功の後に加入したということになる。特にデイヴィッド・カヴァデールは、Deep Purple以前はセミプロバンドに所属するだけで、ブティックで働きながらDeep Purpleのオーディションを受けたら合格し、いきなり世界的なビッグバンドのボーカリストになったシンデレラボーイと言われている(そのセミプロバンドはDeep Purpleの前座をやったこともあるほどのバンドなので、シンデレラボーイ云々のくだり多少モッた話かとも思うが)。
三期生・四期生のデイヴィッド、グレン、トミーと、それ以前のメンバーとは、年齢差もあるがそれ以上にミュージシャンとしてのキャリアにもそのような隔たりが存在していたので、そんなことも考えながら聞くと、またいっそう味わい深いライブアルバムとなる。
Deep Purpleが解散した後、デイヴィッド・カヴァデールもグレン・ヒューズも、それぞれ別々にトミー・ボーリンと新しいバンドをやる予定だったと発言しているのも興味深い。

因みにデイヴィッド・カヴァデールはSmoke On The Waterを歌うときは、歌詞の主語を、「We」から「They」に変えて歌う。「We all came out to Montereax ~」を「They all came out to Montereax ~」と歌うのである。つまり「俺たちは~」じゃなく「奴らがよ~」と歌い続け、多分今でもそんな機会があればそう歌うと思う。おそらく加入した時から、リッチー・ブラックモアが在籍していた第三期の最初からそのように歌っていたと思われるが、実際本人は火事も見てなきゃ寒々しいグランド・ホテルでのレコーディングも経験してない(バンドが実際に経験したことを歌詞にした絵日記のような歌なので)ので、そう歌うのが正しいと言えば正しい。しかし前述したようなキャリアを考えると、本当に心が強い人だと思われ、後にDeep Purple出身者の中でもっともアメリカで成功したロックスターとなるのも頷ける。
そんなわけで、これから皆さんもカラオケやらバンドやらでSmoke On The Waterを歌われる際は、デイヴィッド・カヴァデールのように「They all came out to Montereax ~」と歌いだしましょう。そして、なんで「They」なのって隣の素敵な人が聞いてきたら、このくだりを説明してひとり悦に入りましょう。絶対にそこに気づいて聞いてくる人なんて居ないと思いますが。

話をこのアルバムLive at Long Beach 1976に戻すと、なぜ海賊盤の頃から、このアルバムがそこまで注目されたのか。
ガッカリする迷盤Last Concert in Japanを先にリリースし(され)、偉大なリッチー・ブラックモアとも比較されて、一時はDeep Purpleを解散に追いやった下手くそギターリストとの烙印まで押されたトミー・ボーリンにその理由がある。また、トミー・ボーリンばかりにフォーカスされがちなアルバムではあるが、聴きどころはむしろ別にあるとも思える。

そして、その辺のお話は後半に続きます。

全然身近な人という感じがしないので(実際に全くそうなのですが)敬称は省略しました。

ROAD HOUSE DINING BEER BAR

〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-4-19 ミルトスビル1・2F
JR 新宿駅 B16番出口 徒歩1分
西武新宿線 西武新宿駅 徒歩2分
都営大江戸線 新宿西口駅 徒歩1分
050-5797-9267
営業時間
月~木・土 16:00~翌2:00
金 16:00~翌4:00
日・祝日 16:00~翌1:00

駅から近くてアクセス抜群。
少人数~大規模パーティや宴会などでも利用でき、貸切は15名~最大70名まで可能。大型スクリーンやマイク、音響などの設備も充実している。
2014年07月、ネパール連邦民主共和国の首都カトマンズに、系列店Road House Dining Beer Bar Kathmandu branchをオープン。

hiro

author : hiro
my favorite beer : Henry Weinhard's Private Reserve